松下正幸氏(パナソニックホールディングス特別顧問)
時代の流れとともに、以前の万博記念競技場がAFCチャンピオンズリーグでのスタジアム規定を満たさないといった課題が持ち上がったことで「作らないかん」という気運が高まったことが新スタジアム建設のきっかけになりました。募金で作ることが決定した中で関西の経済界、日本のサッカー界の皆さんをはじめ多くの方にご賛同いただき、お力をお貸しいただきました。今となっては約141億円という金額でよくぞ建ったなというのが正直な気持ちです。コンストラクション・マネジメント、設計・施工を担当いただいた安井建築設計事務所様、竹中工務店様にも深く感謝しております。関係された皆さんの想いや、時代の流れ、当時の様々な人間関係、日本経済の景気状況などを含めて、いろんなタイミングが見事に合致したということだと受け止めています。
竣工に至るまでは決して順風満帆とはいかず、11年の東日本大震災では日本の経済も大きな打撃を受けました。また、その間のガンバのJ2降格はまさかの出来事でしたし、14年の『三冠』も、まさかの出来事でした。Jリーグの歴史においても、J1に昇格した年の『三冠』獲得は初めてでしたが、結果的にこれもまたスタジアム建設を大きく前に進める力になったと記憶しています。おかげで屋根も無事ついて、観客の皆さんに天候が悪い日も雨にあたらずに試合を観ていただけることになって良かったなと思っています。
スタジアムが完成し、スタンドから初めてガンバの試合を観戦した日の感動は今も鮮明に覚えています。以来、私自身も繰り返しパナスタに足を運んでいますが、その度に試合の見やすさ、雰囲気を含めて日本一のスタジアムだと感じています。他のスタジアムでは控え室に行くだけでも動線が難しく、迷うことも多いのに、ここでは全く迷わないのもいいなと思っています(笑)。難点があるとすれば、スタジアムにお越しいただく皆さんの交通の便が今ひとつのところと、この10年、ガンバの成績が今ひとつ振るわないところです。そこはできるだけ早くどうにかしていただいて、日本一のスタジアムで日本一のガンバの姿を見せていただきたいと思っています。
川淵三郎氏(初代Jリーグチェアマン)
以前は、地域にスタジアムを作ることに対して「税金の無駄遣いだ!」と受け取られることが多く、かといって個人で建てるには負担が大きすぎる、というのが一般的な理解として根強くありました。そういう中で、パナスタは日本で初めて寄付を募って民間で建てたスタジアムです。しかも、災害時には地域と連携して防災拠点にもなりうるという新たな可能性を示してくれたことで、スタジアムは地域にとって必要なものだという理解を深めてくれました。その2つのことはのちの日本のスタジアムやアリーナ建設を後押しする大きな力にもなったと思います。だからこそ、ガンバにはスタジアムで先頭に立つだけではなく、サッカーでもぜひとも先頭に立ってもらいたい。本編でもお話しした通り、ガンバが発足した初期の時代から私にとっていろんな縁と思い入れのあるクラブだからこそ、尚更その思いを強く持っています。
少し話が逸れますが、思い入れといえば、94年のナビスコカップ(現ルヴァンカップ)準決勝『ガンバVSヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)』です。僕としては準々決勝の対浦和レッズ戦でガンバがすごくいい試合をしたのもあって、瑞穂陸上競技場にわざわざ足を運んだんです。当時は、ヴェルディが強い時代でしたが「今のガンバならヴェルディを倒すんじゃないか」という期待がありました。そしたら、エースの礒貝洋光が振るわず、内容としても終始ヴェルディに圧倒されて、1-7で大敗してしまいました。「せっかく観にきたのに、なんだ、この試合は!」と頭に血が昇ってしまってね(笑)。試合後、報道陣に囲まれた時に「ガンバは消えてなくなれ」的なことを言っちゃって、それが大きなニュースになってしまった。もちろん、あれは本心ではなく、そんな背景があったからこその愛情の裏返しだったということを伝えておこうかと。Jリーグの歴史も30年以上を数える今は、そんな話を知っている人がどれだけいるのかわからないけれどね(笑)。
金森喜久男氏(スタジアム建設募金団体代表理事)
新スタジアム建設の構想立ち上げから、竣工まで本当にたくさんの方にご協力をいただきました。今になって思えば奇跡のような人と人との結びつき、ご縁に助けられました。改めて心より感謝申し上げます。スタジアムの完成後、たくさんの方からお手紙やメールをいただいたのもすごく嬉しかったです。ガンバサポーターの皆さんからも様々な喜びの声を聞かせていただきましたし、アウェイサポーターの方からは「息子をサッカー観戦に連れて行っても試合中ずっとウロチョロしていたのに、パナスタではずっと手すりを握りしめて食い入るようにサッカーを観ていました。とても魅力的なスタジアムでした」というメールも印象に残っています。そうした声を聞くたびに、募金団体を立ち上げた時からずっと言い続けてきた『お客さんが楽しめるスタジアム』ができたのだと嬉しくなりました。完成後も足繁くパナスタに…という気持ちはあるのですが、一度、スポーツ会社の社長を経験すると『観戦』が心臓に悪いものだと体に刻まれてしまってなかなか観れません(笑)。当時はよく川淵(三郎)さんに「試合中は必ず水を2リットル飲め。血圧が上がるぞ」と言われていましたが、またペットボトルを4本持って観戦に訪れようと思います。
後藤圭二氏(吹田市長)
『市立吹田サッカースタジアム』『パナソニックスタジアム吹田』が完成して10年の月日が流れた中で、たくさんの方がこのスタジアムに足を運んでくださいました。ガンバさんの試合に限らず、日本代表戦も数多く開催されたこともあって、多くのサッカーファンの間で「吹田、行ってきた?」「あそこ、臨場感すごいよな」的な会話が交わされたんじゃないかと思います。おかげで、関東圏の方にも「吹田」を「すいた」と正しく読んでくださる方も増えました(笑)。近年、他の各市に比べて新規採用職員の応募をたくさんいただいているのも、間違いなくスタジアムやエキスポシティといった吹田に誕生した新たな名所によるイメージアップのおかげもあるんじゃないかと嬉しく思っています。私自身、繰り返し足を運んでいる中で1番のおすすめは、スタンドからピッチまでの距離が近く、すごい迫力で選手の皆さんのプレーを楽しめるところです。あと、観客の方はお入りいただけない場所ですが、ホームチームの選手控室もすごく格好いいです。音が真ん中に集まるように設計されていて声が音の反響が良く、一度、音楽関係者の方をご案内した時も驚かれていました。あのロッカーもスタッフや選手の皆さんの『熱』をより高める場所になっているんじゃないかと思います。