宇佐美貴史選手(ガンバ大阪)
宇佐美貴史選手(ガンバ大阪)
今から約10年前、初めてパナソニックスタジアム吹田に立ったとき『すごいスタジアムをホームにするクラブになったんやなー』と思ったのを覚えています。毎試合7万人近い観客を集めるFCバイエルンのホーム、アリアンツ・アレーナをはじめ、海外の主要スタジアムに比べると規模こそ小さいとはいえ、それに近い雰囲気や威厳を感じて、どこか他人事のように『すごいなー』って思っていました。
『他人事』に感じたのは、あまりにも以前の万博記念競技場から変わりすぎていたのと、自分たちのホームという感覚をまだ持てていなかったから。選手やスタッフはもちろん、ファン・サポーターの皆さんも最初はどこか探り探りで、これからどんなふうに自分たちのホームに育てていけばいいのかを考えながら戦っていたような感覚もありました。
その後、僕自身は2016年夏に海外移籍をしたのでしばらくガンバを離れていましたが、2019年夏に戻ってきた時には『ああ、パナスタは完全にガンバのホームスタジアムになったんやな』って実感がありました。チームもここをホームスタジアムとして戦うことに馴染んでいる印象があったし、ファン・サポーターの皆さんもまさに『我が家』的な空気を漂わせていました。
以来、年々、スタジアムに響き渡る応援の声は迫力を増してきた印象があります。試合に入場する際にスタジアム全体を視界にとらえた時の、人の壁が四方から押し迫ってくるような圧迫感にも凄みがあるし、パナスタやからこそ漂う一体感も年々『ホーム』の強みとして際立ってきた印象もあります。
近年、ホームゲームの勝率がいいのもパナスタの力を示すもの。独特の要塞感と「ここでは負けへんやろ」みたいな空気が明確に漂いつつあるのも、パナスタ建設に際してご協力いただいた方たちみんなで歩んできた、この10年の成果やと思っています。と同時に、皆さんを代表してピッチに立つ僕たち選手はこれからもパナスタが歩んできた歴史への感謝を忘れず、しっかりとその想いを背負って戦わなければいけないとも思います。
勝った時の爆発感が凄まじい一方で、負けた時の失望感をまざまざと見せつけられるというのもパナスタならではです。ピッチまでの距離が近い分、皆さんがスタンドで見せる表情や張り上げる声がダイレクトに伝わってくるのも魅力の1つやと思います。時にそれは大きな力になるばかりではなく、エネルギーの使い方を間違えるとマイナスにも働きかねないのが専用スタジアムの特徴でもありますが、僕はその感情の『振り幅』があるから生まれるエネルギーもあると思っています。だからこそ、それもまたチームの肥やしにしながら、強いガンバを作り出すスタジアムになっていけば最高です。
せっかくの機会なので、僕が好きなパナスタの風景を紹介すると、高速道路を毎日のように利用する僕にとっては、吹田インターらへんで必ず目に飛び込んでくるスタジアムの外観が大好物です。青く光る『Panasonic Stadium SUITA』の文字を見ながら、スタジアムに向かう時は気持ちを盛り上げてもらえますし、帰りは仕事を終えた安堵感や、試合を戦い終えた高揚感などもあって、いろんな感情にさせられます。子供たちを車に乗せていると決まって「あ、パパのスタジアム!」と言って喜んでくれるのもなんか嬉しい。車を使わない人はわかりづらいかもですが、スタジアム内部とはまた違う凄みを漂わせているので、吹田インターを利用される方はぜひ、そこもお見逃しなく。
初瀬亮選手(ガンバ大阪)
初瀬亮選手(ガンバ大阪)
パナスタをガンバのホームスタジアムとして利用し始めた2016年に、プロキャリアをスタートした僕にとって、杮落としの名古屋グランパス戦は、プロデビュー戦ということもあり、めちゃめちゃ印象に残っています。特に、前年度の天皇杯決勝に二種登録選手としてメンバー入りさせてもらった中で『タイトル』を味わえた経験は、「プロの舞台で活躍したい」という思いを強めるものになっていたからこそ、しっかりアピールするぞ、と思っていました。ただ、35,000人を超える人の前でプレーしたのは初めてで、めちゃめちゃ緊張しました。声が全く通らない状況を体感して「しっかり戦術を理解してピッチに立たないとアカンな」って思ったのを覚えています。
このシーズンで印象に残っているのは、ガンバU-23で戦った4月の大阪ダービーです。J3リーグだったにもかかわらず8,000人を超える人たちが観に来てくれて『これぞホーム』という雰囲気でプレーできてすごく心強かったのを覚えています。前半の早い段階で退場者を出しながら先制し、追いつかれたけど、また逆転して勝てたのもめっちゃ嬉しかった。
2019年にヴィッセル神戸に移籍したのでそこからしばらくは対戦相手としてパナスタに足を踏み入れることになりましたが、アウェイチームとして臨むパナスタの圧はすごい威力でした。以前からガンバサポーターはJリーグでも群を抜いて声がデカい印象でしたが、そのサポーターの声援も含めてスタジアム全体で一気に雰囲気を持っていかれる感じもしました。僕に浴びせられるブーイングもめっちゃ聞こえていました(笑)。移籍した最初のシーズンは特にボールを持つたびにブーイングをされたし、挨拶に行ってもブーイングでしたが、僕はそれを愛情と受け止め「活躍して、成長した姿を見せるんや」と励みにもしていました。だからこそ、23年にリーグ優勝を決めた直後、最終節でパナスタに乗り込んだ際、試合後、初めて拍手をいただいた時は「ああ、ようやく認めもらえたんかな」と思った記憶もあります。
昨シーズン、7年半ぶりにガンバのユニフォームを着てプレーしたパナスタは心強さしかなかったです。ガンバでの再デビュー戦となった横浜FC戦(J1リーグ第27節)はすごい拍手とコールで迎えてもらってすごく嬉しかったし、いつかガンバに帰ってきたいと思っていた僕にとってはとても特別な瞬間でした。その試合を勝てて、皆さんとガンバクラップができたことで「ようやく帰ってこれたな」という気持ちにもなりました。相変わらず『声』の響き方もすごくて、コーナーキックの際にぐわ〜っとスタンドが盛り上がる感じにもめちゃめちゃ気持ちが昂りました。ああいう雰囲気は、ピッチとスタンドの距離がめちゃ近いパナスタならではだからこそ、もっともっとファン・サポーターの皆さんと一緒にパナスタを熱くしたいとも思いました! 実際、僕ら選手の気迫のあるプレーと、それに呼応してくれる皆さんの声援が掛け算になっていけば、今後ますますパナスタは唯一の臨場感を漂わせられるスタジアムになっていけるはずです。それは勝利に近づく大きな力にもなると思っています。
このパナスタはたくさんの方の募金で建てられたスタジアムです。アカデミー時代は、クラブの方たちをはじめとするいろんな人がいろんな場所で募金活動をしている姿も見てきました。その時、募金をしてくださった方たちの想いはネジの一つに、椅子の一つに変わり、僕たちを応援し続けてくれています。その温かさを背負いつつ、しっかりと恩返しをするためにも近い将来、必ずここでタイトルを掲げたいです!
―
高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa