遠藤保仁氏(ガンバ大阪コーチ)
遠藤保仁氏(ガンバ大阪コーチ)
新スタジアムの建設が決まり、工事が始まった時から少しずつ形作られていくのを見ていたし、皆さんよりも一足早く、ロッカーができたといえば見に行き、いよいよ完成するぞ! という直前にはチームメイトと見学させてもらったりしながら「ここにお客さんが入ったらいい雰囲気になるだろうなー」と待っていました。
2016年にホームスタジアムとしての利用を開始したときも、専用スタジアムならではの臨場感があってプレーする僕らだけではなく、観戦する人にとっても楽しめるスタジアムだろうなーと思いながらボールを蹴っていました。もっとも、僕らと同じようにアウェイチームの選手もパナスタ特有の臨場感に気持ちが昂るのか、モチベーション高く入ってくるので、すごくやりにくかったのも印象に残っています(笑)。
とはいえ、僕が本当の意味でパナスタの魅力を実感したのは、ガンバを離れ、ジュビロ磐田の一員としてこのスタジアムで試合をした時だった気がします。外から見るからこそ在籍している時は気づかなかった良さを感じた部分もあったし、改めてガンバのクラブの大きさも実感しました。練習場やクラブ事務所も同じ場所にあって、全てがパナスタから発信されるのも日本では稀で、それもパナスタの大きな魅力だと思いました。
利用が始まった時に提案した「ウー!」もこの10年の時間をかけてずいぶん定着してきて嬉しいです。高校時代に初めてブラジルで試合を見た際にスタンドでファン・サポーターの人が惜しいシーンのたびにあげる「ウー!」という声やその雰囲気を「格好いいなー」と思ったのと、プロとしてプレーするようになって、ピッチでのチャレンジしたプレーに対して「あー」と残念そうな声が聞こえてくるのがめちゃめちゃ嫌だったので提案しました。我ながらいい案だったと思っています(笑)。
その時に、応援のチャントがもう少しゆっくりでもいいんじゃないかという提案もして、それは却下されましたが、今でも1つくらい、スタジアムに初めてきた人でもすぐに覚えられて、一緒に口ずさめる、わかりやすく、ゆっくりな、でも重みのあるチャントがあってもいいんじゃないかと思っています。あともう一つ、勝った試合の後のガンバクラップも、始まった当初はもっとゆっくりだったのに最近は早すぎる! 先頭に立つ選手のリード次第のところもありますが、1回目から2回目の手拍子はもっと溜めても格好いいのになーって思います。…と最近は、外から試合を観ることも増えたので色々意見しましたが、最後は皆さんにお任せで。好きに、だけど、熱く応援してください。
ホームスタジアムの利用から10年が経ち、昨今はパナスタが募金で建てられたことを知らない人も増えてきました。近年加入した選手やスタッフ、新しくサポーターになった人たちにとっては、パナスタのある日常が当たり前になっていることでしょう。それも新たな歴史を積み上げていくことでもありますが、一方で、僕を含め、パナスタ建設の経緯や歴史を知る人間は、後世にそれを伝えていくことも大事な役目だと感じています。どれだけの方の尽力があって今があるのか、『募金』にどれだけの人の想いが込められたのか。それを語り継ぎ、感謝の気持ちを持ち続けることもパナスタに唯一無二の歴史を積み上げていくことに繋がるんじゃないかと思います。
パナスタはまだまだ成長できるポテンシャルを秘めています。日々管理してくださる方がいてこそ美しいホームスタジアムであり続けていることを忘れず、これからもみんなでこのパナスタをより圧倒的なホームに育てていきましょう。
明神智和氏(ガンバ大阪コーチ)
明神智和氏(ガンバ大阪コーチ)
僕は2015年シーズンを終えてガンバを離れたので、2016年は名古屋グランパスの一員として、パナスタの杮落とし試合であるプレシーズンマッチに出場しました。ガンバには2006年からちょうど10年在籍し、新スタジアムの構想が持ち上がった時も、建設が始まってからもずっとその過程を見ていましたから。本当に素晴らしいスタジアムができたんだなっていう嬉しさと、ガンバの一員としてはここに立てなかったという感情もあって、複雑な思いで『パナスタ』を体感したのを覚えています。
杮落とし試合での対戦が決まった時から、「絶対に試合に出たい!」という思いがあったのに、残念ながら、キャンプで軽く足を痛めて出遅れてしまい…。先発のピッチには立つことができませんでしたが、小倉隆史監督が気を遣ってベンチに入れてくださって、88分からピッチに立つことができました。その時の印象は…日本代表戦などで海外のスタジアムも色々と体感してきましたが、客席がすごく近い上に、スタンドも四方から高い壁で囲まれているような圧迫感があったのを覚えています。ピッチからスタンドを見渡すと、観客の皆さんが押し迫ってくるような気がしたし、おまけに全席、屋根でも覆われているせいか声がすごく中に籠って、響き渡る感じも臨場感がありました。
引退後、2020年に指導者としてガンバに戻ってきた中で、アカデミーコーチをしていた時は基本的にスタンドから試合を観ることがほとんどでしたが、スタンドからの風景は最高でした。また、現役時代はあまりスタンドからサッカーを観る機会がなかった中で、コンコースを歩く人の熱、試合が始まるまでのザワザワした雰囲気といった、初めて味合う空気をすごく新鮮に感じていました。当時はアウェイ側のゴール裏から試合を見ることが多かったのでピッチを縦に見る感じで観戦していましたが、戦術面を知るにはすごく見やすかったです。もしかしたらサッカーの指導者をしている方や戦術を楽しむのが好きな方は、メインスタンドやバックスタンドよりゴール裏から見るのも面白いかも知れません。ぜひ一度、試してみてください。
また試合当日、朝早くから試合に向けた準備が始まって、すでに並び始めているサポーターの方たちもいて…というところから、試合開始が近づくにつれて少しずつ人が増えていく変化を目の当たりにしながら、「こんなにたくさんの人が試合を楽しみにしてくれているんだ」「試合運営のためにこれだけの人が働いてくれているんだ」と実感し、改めてプロクラブというのはいろんな人に支えられているんだなと感謝した自分もいました。と同時に、試合に負けた日は特に、ファン・サポーターの皆さんがなんとなく足早にスタジアムから退散するように感じ、申し訳ないような気持ちになったこともあります。
昨年からトップチームのコーチに就任しましたが、ウォーミングアップでピッチに足を踏み入れるたびに「やっぱりこのスタジアムは最高だな」と思っています。下から見渡すスタジアムはすごくいい風景で感情も昂るし、たくさんのパワーがスタンドから注がれるのを感じます。また万博記念競技場で戦っていた時代を知っているからこそ、こんなにも素晴らしいホームスタジアムで戦えていることに毎回、感謝の気持ちも湧いてきます。
このスタジアムには、今も建設に関わったたくさんの方の熱意と募金をしてくださってたくさんの方の想いが込められています。時間の経過とともにそれを忘れてしまわないように、今回のような節目では必ず思い出し、みんなでリマインドしながら、新たな歴史を積み上げていければと思っています。
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高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa